SNSなどで話題になっている「室外機に水をかけると節電になる!」という情報一度は聞いたことありませんか?
実はこの「水をかける節電法」、室外機の天板を冷やすタイプと、熱交換器(アルミフィン)に直接水をかけるタイプの2種類があるようです。以前、天板冷却タイプについては実際に検証してみましたが、節電効果は見られませんでした。
そこで今回は熱交換器に直接水をかけるタイプの方法は本当に節電できるのか?というテーマで検証してみました!
先に結論をお伝えすると、たしかに消費電力はやや下がったものの、水道代を含めたトータルコストでは赤字になります。
室外機に水をかけると節電になると言われる理由
エアコンの室外機は、室内から運び出された熱を屋外に放出する「熱交換器」を備えており、外気との温度差を使って効率的に冷暖房を行っています。しかし、猛暑などで外気温が高すぎると、熱をうまく放出できずに冷房効率が下がり、消費電力が上がってしまうことがあります。
そのため、「室外機を冷やすことで熱交換効率が上がり、節電になるのでは?」という説が広まりました。
具体的には、次のような2つの方法がよく話題にされています。
【タイプ①】天板冷却タイプ(天面に濡れタオルを置くなど)

室外機の上部(天板)に濡れタオルや打ち水をすることで、表面温度を下げ、内部温度の上昇を防ぐという方法です。直射日光が当たる場所に設置されている室外機でよく試されており、「本体が熱くなりすぎなければ効率が上がるはず」という考えから行われています。
実際に検証したところ、確かに天板やその付近は冷却されるものの天板部分は冷媒の放熱に直接関わるパーツではないため、節電効果はほぼ見込めないといった結果でした(※検証済み)。

【タイプ②】熱交換器冷却タイプ(アルミフィンに直接水をかける)
もう一つの方法が、室外機の背面や側面にあるアルミ製の熱交換器(フィン)に直接水をかけるというやり方です。これは、放熱面に水を当てることで熱交換効率を一時的に高め、コンプレッサーの負担を軽減して節電につなげるという考え方です。
実際、室外機はもともとファンによる空冷方式で熱を逃がしていますが、ここに水冷の要素が加わることで、天板冷却タイプよりも効果が期待できそうに思えます。
このように一口に「室外機に水をかけると節電できる」と言っても、どの部分にどう水をかけるかによって論点が変わります。この手の話題を語るときは、「天板冷却」なのか「熱交換器冷却」なのか、前提条件をしっかり整理しておくことが重要ですね。
実際にやってみた!熱交換器を冷やす実験

今回は、以下の条件で検証しました。
- 外気温:約36℃(晴天)
- 室外機:南向きで直射日光あり
- 室内:リモコン設定温度を25℃で固定。
- 冷却方法:水道水を使用して熱交換器を冷やす続ける。
- 冷却箇所:次項で説明
- 電力測定:ワットチェッカーを使ってエアコンの消費電力を計測
- 温度測定:室内温度と室外機の吸込温度(背面)を測定
冷却の場所
冷却する箇所ですが、本当は室外機の熱交換器をすべて冷やすように水を掛けたかったのですが、背面のスペースの無さと放水のホースが一個しかないことから、2パターンに分けて検証しています。
2パターンやった理由としては、熱交換器の冷却箇所や面積で変化があるのかを見るためです。(水量は同じです)

結果:冷却による消費電力の変化はある
冷却なし⇒冷却パターン①⇒冷却パターン②⇒冷却なしの順で消費電力の変化を見て、本当に節電効果があるのかを見ていきます。

1.冷却なし
最初に、冷却なしの状態でエアコンを稼働させたところ、平均消費電力は約366Wでした。
2.冷却パターン①
次に、室外機の右側面の一部(半分)に水道水をかけ続けるという方法で冷却を開始しました。すると、水をかけた直後に消費電力がグッと下がる変化(変化①)が見られ、その後は平均268Wで安定しました。
3.冷却パターン②
続いて、水をかける範囲を広げるパターンとして、右側面の前面全体に水をかけるように変更。水の量はパターン①と同じですが、冷却面積が増えたことや、タイミング的に外気温がやや下がった可能性もあったのか、さらに消費電力が低下。ただし、変化量は小さかったため、明確な因果関係は判断しにくいのが正直なところです。
4.冷却なし
最後に、冷却なしの状態で再測定も行いました。このときは室内温度・外気温ともに一定の条件だったため、冷却の有無による純粋な違いを確認できたと考えられます。その結果、消費電力の差は約28Wで、割合にしておよそ10%の削減となりました。
なお、今回は比較的出力の小さいエアコンでの検証でしたが、もしこれが高出力のエアコンであれば、消費電力の削減幅もさらに大きくなる可能性があります。
変化①と変化②の比較では、削減できた消費電力に大きな差が見られました。この違いが生じた理由としては、以下の点が考えられます。
まず、変化①のタイミングでは外気温が下がっていた可能性があります。さらに、熱交換器の冷却効果に加え、水が地面を冷やしたことによる吸込空気温度の低下も影響していたと推測されます。
以上を踏まえると、変化②のほうが、熱交換器の冷却によって純粋に削減できた消費電力を示していると考えるのが妥当かと思います。
結局、光熱費の削減になるのか?
節電になるかどうかで言ったら、節電になると思います。ただし、電気代ではなく、水道代も含めたトータルコストで考えた場合、おそらく光熱費の削減にはなりません。
水道代を試算するために、検証時と同じ水量で1分間バケツに貯めたのちに、2Lペットボトルに移し替えて、1分間あたりの水道使用量を計測します。

以下、水道代を考慮したまとめです。1時間あたりとひと月あたりでそれぞれ試算しています。変化②の方が純粋な節電効果だと思うので、変化①はちょっと甘めの試算と思って下さい。
内容 | 節電効果(1時間あたり) | 水道代(1時間あたり) | トータル |
---|---|---|---|
変化①(甘め試算) | -3.1円 | +44円 | +41円 |
変化② | -0.9円 | +44円 | +43円 |
内容 | 節電効果(ひと月あたり) | 水道代(ひと月あたり) | トータル |
---|---|---|---|
変化①(甘め試算) | -744円 | +10560円 | +9816円 |
変化② | -216円 | +10560円 | +10344円 |
以上のように節電効果よりも圧倒的に水道代がかかるため、トータルではひと月あたり10000円くらい光熱費がかかってしまいます。
「水の量多すぎでしょ・・」や「私のエアコンは高出力なので・・」とかあるかもしれませんが、この結果を見る限りおそらく逆転するのは厳しいと思います。仮に節電効果が上回ったとしても月数百円くらいの節電効果に手間暇をかけるメリットはないと思います。
本当に効果がある節電対策5選
では、何をすれば効果的なのでしょうか?
有名どころですが挙げておきます。
節電対策 | 効果 | 注意点 |
---|---|---|
室外機に日陰を作る(おすすめ!) | ◎ | 天板につけるアルミシートは×。室外機付近一帯を日陰にするようなものがベスト。 |
室外機まわりの風通しを良くする | ◎ | 熱ごもりしないように。 |
室外機の熱交換器表面を拭く。 | ○ | 目詰まりしてるレベルなら効果抜群です。 |
設定温度を1℃上げる | ◎ | 定番ですね。 |
節電モードや風量自動を活用 | ◯ | 機種によって効果は異なります。 |
まとめ:水かけはおすすめできない
「室外機(熱交換器)に水をかけると節電になる」という話は、理論的には正しいですが、節電効果以上に水道代がかさむためトータルでは光熱費削減にはつながらない可能性が高いです。
さらに、水道水の成分が熱交換器に付着したり、冷媒の動きが悪くなったりしてコンプレッサの故障を引き起こしたりとデメリットも多くあります。
SNSで流れているエアコン裏技的なやつは、残念ですが誤った情報である確率が非常に高いです。コメント欄などで指摘されている方もいらっしゃいますが信じている方が多い印象です。
トリッキーなことはせずに普通に使うのが一番だと思います!
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